JAL YS-11-100 (1965〜1996) / YS-11A-200, 500 (1968〜2006)
YS-11A-300, 600 (1968〜1990)

YS-11は、日本航空機製造(NAMC)が開発・生産した双発ターボプロップ旅客機である。
「空飛ぶ大和魂」と呼ばれたYSは、日本中が東京オリンピックに沸く1964年に初飛行し、聖火の輸送もこなして鮮やかなデビューを飾った。
ライバルのホーカーシドレーHS748と同じく低翼配置の機体で、キャビンには横4列標準60席が配置される。
大きく分けて初期量産型の100型、改良型のA-200/500型、貨客混載型のA-300/600型、全貨物型のA-400型が開発された。
安全性や経済性も含めた性能面では非常に優れた機体であり、特に機体の頑丈さはHS748やF27フレンドシップはもちろん、後継機として導入されているQ400をも超えるほどのものである。
しかし、販売体制の弱さによって特に海外からの発注が伸びず、商業的には失敗となった。
後継機も設計されないままに1973年にプロトタイプ2機を含めて182機で製造を終了し、NAMC自体も解散した。
その後、日本の旅客機はボーイングやエアバスなどの下請けに甘んじる40年のブランクを経て、2013年初飛行予定の三菱MRJで復活を遂げる。

のちに合併して東亜国内航空(TDA)となる日本国内航空(JDA)と東亜航空(TAW)は、国内ローカル線を専門に運航していた。
両社ともに本機種の計画には大きな興味を示し、全日空(ANA)とともにローンチカスタマーに名を連ねた。
1965年にTAW初号機JA8639とJDA初号機JA8640を受領し、貨客混載型5機を含むのべ48機を運航した。
1988年の国際線進出に伴って日本エアシステム(JAS)に社名を変更したのちも1996年の引退までローカル線を支え続けてきた。
うち12機はフラッグシップとして子会社の日本エアコミューター(JAC)に移管され、衝突防止装置TCASの装備義務化で運用が禁止される2006年まで運航された。
ラストフライトは2006年9月30日、JACデビューと同じ路線の沖永良部発鹿児島行きのJL3806便だった。
栄誉あるYS最終便に抜擢された8766は、TDAからJAS、そしてJACと一筋で36年も歩んできた機体だ。

沖縄がまだアメリカ統治下にあった1968年、南西航空(SWL)にも待望のYS初号機JA8696が納入された。
離島の短い滑走路で運用できる離着陸性能、最大64席を収容できるキャパシティ、そして日本復帰への強い想いが導入の決め手となった。
SWLではのべ8機を運航し、日本トランスオーシャン航空(JTA)に社名が変更された後の1999年まで活躍を続けた。
離島特有の厳しい運航環境にもかかわらず、1機たりとも全損事故を起こしていないことは特筆すべきである。

TDA系列、SWL系列ともに長期間にわたって運航され、さらに合併や社名変更があったため塗装のバリエーションが多く、正規塗装だけで16種類もバリエーションがあるのも本機種の特徴といえる。

「JAL JET STORY」 イカロス出版, 2009年
「旅客機型式シリーズ10 日本航空機製造YS-11」 イカロス出版, 2004年
「日本のエアライン2008-2009」 イカロス出版, 2008年

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