MD-90は、アメリカの航空機メーカー、マクドネルダグラス(現ボーイング)が最後に設計した小型機である。
開発の背景には、 旧式化したDC-9のリプレースを狙って、ボーイングの新世代B737やエアバスのA320シリーズが受注を伸ばしている実態があった。
本機種はベストセラーとなったMD-80の設計をベースに、MD-88で導入されたグラスコクピットと新開発のIAE V2500に変更することで誕生した。
いわば「MD-80ネクストジェネレーション」ともいえる、マクドネルダグラスが自信を持って送り出した小型機の集大成であった。
しかし小型機が中長距離路線に進出するのに伴って、航続距離に余裕があるライバルに押されて受注に苦戦した。
さらに中型機のMD-11の失敗とも重なったことからマクドネルダグラスはボーイングに吸収合併されることとなり、同じ小型機の737-800と競合するため、わずか114機でMD-11とともに生産が打ち切られてしまった。
本機種は、JALに統合されたJAS(日本エアシステム)がDC-9-41に代わるローカル線の主力機として1995年から導入したものだ。
翌1996年から路線投入され、最終的には全16機の運航体制となり伊丹・名古屋・新千歳・福岡をベースにローカル線のネットワークを支えてきた。
機体のデザインは映画監督の黒澤明さんに依頼し、当時としては珍しい7種類のマルチカラーで就航した。
日本の翼の中でもひときわ鮮やかな本機種は次々に開設されるJASの新路線にも投入され、「虹の架け橋」となって各地を結んだ。
機内はモノクラス166席で、JASの小型機としては初めてビデオ・オーディオの機内娯楽システムが搭載された。
しかし2001年にはJALとの統合が決まり、全機がJAL新塗装に塗り替えられ「黒澤レインボー」は姿を消した。
現在ではJTA・JEXのB737-400とともにプレミアムエコノミーの「クラスJ」が設置され、2クラス150席の仕様になりローカル線を支えてきた。
経営再建に伴う機種統一により、日本最後のダグラス機は2013年3月30日で惜しまれながら引退した。
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8070) 現行塗装
登録記号 |
型式 |
製造番号 |
登録年月 |
抹消年月 |
備考 |
JA 8004 |
MD-90-30 |
53359/2184 |
1997.06 |
2012.05 |
売却 現デルタ航空 N940DN
元「黒澤レインボー#1」 |
JA 8020 |
MD-90-30 |
53360/2190 |
1997.07 |
2013.04 |
売却 現デルタ航空 N950DN
元「黒澤レインボー#2」 |
JA 8029 |
MD-90-30 |
53361/2202 |
1997.11 |
2013.05 |
売却 現デルタ航空 N951DN
元「黒澤レインボー#3」ラストフライト機 |
JA 8062 |
MD-90-30 |
53352/2098 |
1995.06 |
2012.01 |
売却 現デルタ航空 N937DN
元「黒澤レインボー#4」 |
JA 8063 |
MD-90-30 |
53353/2120 |
1995.09 |
2012.03 |
売却 現デルタ航空 N938DN
元「黒澤レインボー#3」 |
JA 8064 |
MD-90-30 |
53354/2125 |
1995.12 |
2012.10 |
売却 現デルタ航空 N946DN
元「黒澤レインボー#1」 |
JA 8065 |
MD-90-30 |
53355/2131 |
1996.03 |
2013.03 |
売却 現デルタ航空 N947DN
元「黒澤レインボー#2」 |
JA 8066 |
MD-90-30 |
53356/2157 |
1996.10 |
2012.09 |
売却 現デルタ航空 N939DN
元「黒澤レインボー#5」 |
JA 8069 |
MD-90-30 |
53357/2164 |
1996.12 |
2012.10 |
売却 現デルタ航空 N948DN
元「黒澤レインボー#6」 |
JA 8070 |
MD-90-30 |
53358/2179 |
1997.05 |
2013.02 |
売却 現デルタ航空 N949DN
元「黒澤レインボー#7」・新塗装 |
JA 001D |
MD-90-30 |
53555/2207 |
1997.11 |
2012.02 |
売却 現デルタ航空 N941DN
元「黒澤レインボー#4」 |
JA 002D |
MD-90-30 |
53556/2210 |
1997.12 |
2012.07 |
売却 現デルタ航空 N942DN
元「黒澤レインボー#5」 |
JA 003D |
MD-90-30 |
53557/2211 |
1997.12 |
2012.08 |
売却 現デルタ航空 N943DN
元「黒澤レインボー#6」 |
JA 004D |
MD-90-30 |
53558/2212 |
1997.12 |
2012.07 |
売却 現デルタ航空 N944DN
元「黒澤レインボー#7」 |
JA 005D |
MD-90-30 |
53559/2236 |
1998.07 |
2012.06 |
売却 現デルタ航空 N945DN
元「黒澤レインボー#1」 |
JA 006D |
MD-90-30 |
53560/2245 |
1998.10 |
2012.11 |
売却 現デルタ航空 N952DN
元「黒澤レインボー#2」 |
|
MD-90 (国内線) |
N12 |
全長 |
46.5 m |
全幅 |
32.9 m |
全高 |
9.4 m |
巡航速度 |
815 km/h |
航続距離 |
2,330 km |
最大離陸重量 |
71.0 t |
エンジン |
IAE V2525-D5 11,340 kg ×2 |
座席数 |
150
(P18 Y132) |
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 006D) 旧塗装
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8064) 黒澤レインボー1号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8065) 黒澤レインボー2号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8063) 黒澤レインボー3号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8062) 黒澤レインボー4号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8066) 黒澤レインボー5号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8069) 黒澤レインボー6号機
BOEING (MCDONNELL DOUGLAS) MD-90-30 (JA 8070) 黒澤レインボー7号機
Part 1 (JA 8062, 8063, 8064, 8065)
Part 2 (JA 8066, 8069, 8070, 8004)
Part 3 (JA 8020, 8029, 001D, 002D) Part 4 (JA 003D, 004D, 005D, 006D
「JAL JET STORY」 イカロス出版, 2009年
「日本のエアライン2008-2009」 イカロス出版, 2008年
「旅客機型式シリーズ7 DC-9 / MD-80 / MD-90 & Boeing 717」 イカロス出版 2002年
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