ANA VISCOUNT 800 (1961〜1970)


本文へジャンプ
機種概要

バイカウントは、イギリスのヴィッカース社(現BAEシステムズ)による4発ターボプロップ旅客機である。
第二次世界大戦の終結後まもなく開発がスタートし、プロトタイプの600型は1948年に初飛行した。
量産モデルは胴体を延長して大出力のエンジンを積んだ700型になり、1953年に英国欧州航空(BEA, 現ブリティッシュエアウェイズ)で就航した。
揺れや騒音が少なく快適なフライトはDC-3やDC-4といったレシプロ機を時代の彼方へと追いやり、中短距離機はターボプロップが席巻した。
1957年には70席クラスまでさらに大型化した800型が納入され、総勢445機が生産されるベストセラーとなった。
成功したバイカウントは胴体径を拡大したヴァンガード900に進化するとともに、同じイギリスではホーカーシドレー社(現BAEシステムズ)のHS748やブリストル社のブリタニア175など大小様々なターボプロップ機が開発された。

全日空(ANA)はダグラスDC-3に代わり、コンベアCV440メトロポリタンを導入して機材の近代化を進めていた。
当時は国内線のみ運航していたので、次のステップはレシプロ機よりも大型で高速のターボプロップ機を導入した。
1960年、一回り小型のフォッカーF27フレンドシップとほぼ時期を同じくして、いわゆるハイローミックスとして本機種を国内線に投入した。
ANAは自社発注の800型が到着する前に、DC-4を飛ばしていた日本航空(JAL)に差をつけるために700型を2機先行リースして東京−札幌線に投入した。
そして1961年になると発注していた800型が引き渡され、700型と入れ替わる形で9機が就航した。
本機種の巡航速度はDC-4の1.5倍である570km/hを誇り、日本航空のDC-4を空中で追い抜くこともあった。
客室乗務員が「皆様、下に見えますのは当機より先に出発した日本航空のDC-4でございます」とアナウンスしたのは、今でも語り継がれるエピソードである。
しかし、B727やB737をはじめとした短距離ジェット機が国内幹線に就航すると、余った本機種はローカル線に回されることになった。
ローカル線では小型で双発のフレンドシップの方がはるかに運航効率がよく、国産のYS-11が導入されたときに真っ先にリプレースされることになった。
ラストフライトは就航からわずか10年後の1970年と短い活躍であったが、弟分のフレンドシップとともにANAの発展の土台を作り上げた名機である。


全日空 V800
BAE SYSTEMS (VICKERS) VISCOUNT 828 (JA 8201)

フリートリスト
登録記号 型式 製造番号 登録年月 抹消年月 備考
JA 8201 V828 443 1961.06 1970.09 売却 メルパチ航空 PK-MVT 解体
JA 8202 V828 444 1961.07 1962.11 事故抹消 1962.11.19
名古屋にて訓練飛行中に墜落
JA 8203 V828 445 1961.09 1970.09 売却 メルパチ航空 PK-MVG 解体
JA 8205 V828 448 1962.03 1970.03 売却 メルパチ航空 PK-MVS 事故抹消
JA 8206 V828 449 1962.05 1970.12 ラストフライト機
羽田空港にて部品取り解体
JA 8207 V828 450 1962.06 1970.09 羽田空港にて部品取り解体
JA 8208 V828 457 1962.10 1970.09 売却 インターコンチネンタルコロンビア HK-2404 整備保存
JA 8209 V828 458 1962.11 1970.09 売却 サンエクアドル HC-ATV 事故抹消
JA 8210 V828 459 1963.02 1970.03 製造最終号機
売却 メルパチ航空 PK-MVM 解体
G-APKJ V744 88 1960.07 1961.06 短期リース ヴィッカース G-APKJ
事故抹消 1961.06.12
伊丹空港で着陸に失敗し大破
G-APKK V744 89 1960.07 1961.10 短期リース ヴィッカース G-APKK
売却 エンパイアテストパイロットスクール XR801 解体

スペック
V800 (国内線) V700 (国内線)
全長 26.1 m 24.9 m
全幅 28.6 m
全高 8.2 m
巡航速度 570 km/h 520 km/h
航続距離 2,780 km 2,140 km
最大離陸重量 31.3 t 27.5 t
エンジン RR Dart525 2100 SHP ×4 RR Dart506 1576 SHP ×4
座席数 Y68 Y52

ご注意

写真・イラストについては著作権のみ保持しますが、利用についての制限は設けません。
正確な情報を掲載するよう心がけておりますが、誤りがあれば報告していただければ幸いです。


   Copyright (C) 2002-2015 T.Takahashi All Rights Reserved.